しまうまのおたく blog

ヤングキング連載 小幡文生 著 漫画シマウマ の感想を書きます。ネタバレあります。

シマウマの感想 No.2 [1巻 chapter02 アカ—]

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シマウマ1巻 [chapter02 アカ―]


"明るい定め"と名付けられたキャラクター アカ。

 

 

 

“たっちゃん” が中学の因縁の相手 “ドラ” だと気付いた時のアカの顔がとても可愛いです。一瞬 喜びに満ちて あどけない人相が顔を出しますが 、またすぐに悪い顔に戻ってしまいます。
「キミを助けてあげる」というアカの真意はどう捉えたらいいのかと考えてしまいます。私は最初に読んだとき 復讐なのかと思いました。それこそ愛憎、大好きだったから大嫌いで、もしもチャンスがめぐって来たなら自分の手で苦しめたいのかな?憎しみが強いのかな?っと思っていました。けれど話が進むと 強がって素直になれなかったけど また会えて嬉しい、側に居たい、だから助けた。言葉通りオススメの職業だからドラにも進めた!ただ単純にそれだけだったのかなと思えます。中学以降のドラを探そうと思えば探し出せたはずですし憎しみや執着が強ければ探して復讐しているはずです。関係は拗れてしまったけれど また巡り会えたら良いなっと思う初恋(?)の君。複雑そうに見えた関係がもっとずっと単純な事だったのかもしれないと思いました。

 

 

 

現在軸と二人の過去回想が入り乱れます。
アカ視点の中学の回想とドラ視点の中学の回想も入り乱れて描かれているので少しややこしいですが、まず過去の中学時代の二人の話しをしたいです。

 

いじめられっ子だったアカをドラが助けたのは何故?何がしたかったの?何を思ったの?世界に絶望していたアカに生きる希望を与えたのは何故?最初っから仕組まれた事だったのか?それとも偶発的な事だったのか?その事についてドラの真意は今だに何一つ語られていません。

 

ドラの悪事がアカへばれてしまうシーンでアカの「最初から全部…ドラが仕組んだ事なの…」という問いをドラは肯定しますが、最初から全部ドラの企みによってアカが苛められて さらに金銭を巻き上げられた、と読むには辻褄が合わない事があります。好意的な解釈かもしれませんがアカに悪事がバレてしまった時のドラの表情が他のモブたちの薄ら笑いとは異なってます。「最初から全部…ドラが仕組んだ事なの…」と疑われたドラが傷ついたようなか悲しそうな表情を浮かべます。その表情はすぐに消えてしまいますが、その表情が本心の表れだったのではないでしょうか?また、ドラ側からの中学時代の回想では、売った と言ってたはずのCDは割られていて、アカを上手いこと引っ掻けたような発言していたはずのドラの表情は雲ってます。何故なのでしょうか?描かれていない事がありドラの真意も計りかねますが、表面的な出来事とは別の理由があってドラとアカは何か気持ちがすれ違っていたことが読みとれます。因縁の相手というよりは すれ違いで拗れてしまった関係だったんじゃないかなっと後々の2人からも感じます。

 

 

 

いじめっ子からアカを一度は助けたけれど、その後 首謀者とバレて刺された相手の 「助けてあげる」の言葉信じれますか?ドラが本当にアカを騙くらかしていたとするならそんな言葉信じられないし罠としか思えなくないですか?勿論 謎の人物"シマウマ"の事が気になったからでしょうけどそれにしてから、因縁があったわりにとても好意的だと感じます。
アカも、苛めが最初っから仕組まれたことだったと思っているならこんな好意的な態度は取れないのではないかと思います。あの時は状況からドラのこと疑ってしまったけれどそうじゃない、それだけじゃない事は気づいているのかな。

 

 

 

現在軸で二度「運命」という言葉をアカが口にします。144ページの扉絵が二人を運命で繋いでる事を示唆しているようだと思いました。白黒だと解りにくいですがカラーだと二人を繋いでいるドラの煙草の煙は赤色で塗られていてとても運命的な扉絵です。

 

 

 

 

 

 

 

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シマウマ1巻171ページより


アカの下っ端モブで唯一名前のあるフッスィーの「この世で最後の一服だ……」って煙草をドラに差し出しながらの台詞がひりつくような怖さ感じてめちゃくちゃ好きです。ひぇって思いました。
アカの殺す殺すっていう軽口はどこか偽悪的でビビらせてなんぼのお仕事だからこそのハッタリ込みの台詞。ドラもどこかでそう感じてて殺されはしないだろうと高を括ってた所に 、フッスィーがドラは助からないと思い情をかける台詞なので心の底から本気で言ってるから怖い!ドラもこれはガチなヤツ!!って油断していた所ガツンって来る恐怖感!たまらなく大好きなシーンです。フッスィーカッコいい。

 

 

 

ボコられたヤクザのおじさん、その最期は暈されてハッキリとは描かれていません。「あ…そっか…」というアカが……トドメを刺したんじゃないのかな。「得ることの意味をしらねぇお坊ちゃんだ」なんてドラに言われてしまいますけど、そんなドラの圧に飲まれそうにもなってたけれど、昔ほど純粋ではないし強かでずるいことだってするんだよ!と思っているのかもしれないですね。どちらがトドメを刺したかなんてたぶん重要な事では無いのですけど……彼らは運命共同体なのだなと思います。

 

 

 

 

少し映画の話をします。
映画の中学時代のドラからアカへの態度ってとっても感じ悪いです。セクシャリティーをからかって見下してバカにしているような態度を取ってますけれど漫画ではそんな描写一切ないです。ドラは一度もアカを見下した事ないと思います。寧ろ、生まれながらに何でも持ってるような良いとこのお坊っちゃんのアカに対して劣等感や嫉妬があったのでは?と感じます。それからアカだけでなく吉田に対しても、他者のセクシャリティーや恋心を嘲笑うような事は少なくとも表面的にはしてないんですよね、ドラって。アカやキイヌの方が他者をからかう台詞を言ってるくらい。相手に対して偏見無くフラットに接するっていう所がドラの数少ない良い所、悪くもなのは老若男女構わず対等に扱う所かなと思いますけど、映画ではそのドラの良さが全く描かれなかったのは残念です。
アカの事 対等に思っているからぶつかるし、アカの残虐性や行動言動の客観的に見て キモ怖い 所、モブ達が引いててもドラは引いてないし嫌な顔すらしてない。そのくらいドラはアカを対等に見てると思います。

 

 

 

明定。
アカのアカは明るいの明。作中いつでも明るく振る舞うアカの名前。名前はそのキャラクターを表すモノのひとつだけど このキャラクターに明定と名付けるのあまりにも辛いです。いつでも明るいといえば明るいけれど笑っちゃいけない場面でも笑ってしまうし、自分が痛い目にあったり悲しんだり怒っていいような時にだってケラケラ笑っている。辛いときも苦しいときも悲しいときも明るく笑ってる。明るい定めだなんて、それは呪いのような名前にも思えます。

 

 

 

中学時代のドラがアカを"アカ"って呼ぶシーンは描かれていないですけど、再会した時、 自分から「アカだよ」って言っていますし、すんなりドラがそう呼ぶし中学の頃から「アカ」って呼ばれていたんでしょうね。
最初「倉神くん」って呼んでいたアカが季節が変わる頃には「ドラ」と親しげに呼んでますが、ドラの事一目置いてるアカが自分から呼べるとは考えにくいので、ドラが「ドラって呼べよ」とかカッコつけて言ったんじゃないのでしょうか?表面的にかもしれないけれど二人は仲良くなって行ったんだろうなぁ。っと描かれていないシーンを想像してしまいます。

 

ドラの心理描写や独白は限りなく少くそのなかでもアカに対しての気持ちが一切徹底的なほど描かれていません。だから表面的に見えている事柄と明かされないドラの内面には読み手が想像できないような事実が隠されているのでは無いかと勘ぐってしまいます。
これから先描かれる事があるのでしょうか?楽しみです。

 

次はようやく表題のシマウマ登場です。

 

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